【愛染刹那】
俺はそんな軟じゃねえよ・・紗希
心配をかけるのは本意じゃねえがそれはお互い様らしい
あいつもなかなか弱みを晒さない頑なさを秘めていた。
「女」を見せた途端俺が引くとでも思ってるのかもしれない。
だからこそ今回みたいに突然倒れられると心底怖くなっちまう・・
――俺は二度と大切な相手を失いたくねえ・・・
そんなジレンマを抱えながらも俺達は常に対等だった。
もちろん階級ではあっちが上だけどな。
気持ちの上で俺らは貸し借り無しの相棒であることに変わりない。
そんな紗希とバディを組んで以降常に同行しているから今となっては家族同然のじいやより近しい存在だろう。
そんな代わり映えのない日常に突如現れた葉子さんについ気を取られてしまった。
たった一度しか会ったことのなかった彼女だったが、それほど印象に残った存在だったのだ。
「相談したいことがある」という葉子さんの誘いに俺は乗ることにした。
別に事件関係者じゃないから問題はないはずだ。
少しでも力になれるならと二つ返事で俺は承諾した。
とはいえ人妻だけに人目は憚るから、考えた末俺は佐久家で会う段取りをつけた。