【北條紗希】
廊下に出た途端如月先生はため息をつくと言った。
「まずい状況よ・・・彼、相がでてるわ」
それは誇張でもなくまさに的を射た表現に思えた。
巫女の家系でありながら魔女でもある如月先生は第六感がすぐれており、心霊現象にも対処できる貴重な戦力だった。
「相・・・ですか?それって刹那君が呪われている・・とかそういうことですか?」
たとえば不治の病で余命いくばくもない人ならばそういうことも起こりうるかもしれない。
しかし健康な25歳の男性が数日間で相が浮かぶことなんてあるのだろうか?
「そうねえ・・呪いというより、死霊にとりつかれている・・あるいは生気を吸い取られたのかもしれないわ」
また随分とオカルトよりの発言ではあったが、そういう不可思議事象もありうるのだとすでにわかっていた。
FOAFの実験場に選ばれたG県では起こりうる事態なのだ・・
今回は本部長から指示がなく捜査対象ではなかったからの油断だった。