【北條紗希】

 

しばし黙り込んだ刹那君は葛藤しているようだった。無理もない、本能で危険を悟りながらも抗えずにいたことを思えば進歩だった。

 

「私だけではないわ。纐纈さんや新美さんだって貴方を心配してるし、それに刹那君・・貴方には家族がいるでしょう?・・・じいやさんやヨミ君を悲しませないで」

 

個性的なメンツが揃った「とくそう」は私と刹那君、纐纈さんと新美さんで二分化されているようにも見えるが、刑事として事件を解決したいという熱意を共有できる仲間でもある。

 

そしてじいやさんとヨミ君はなによりも大切な刹那君の家族だ。

 

これまでずっと一匹狼だった刹那君だけどもう一人じゃない。

相棒の私だって彼を必要とする一人だ。

 

名前をあげなかったせいか如月先生が悩ましい溜息をついたけど、ライアーズアートの最中だからか何も言わなかった。

 

後が怖いわね・・あせる

 

「・・・すまねえ・・紗希。みんなも・・だが俺はどうすればいい?今は平気だが夜になったらまた俺はあの屋敷に行きたくなっちまう・・・どうすればいいのか俺にはわからねえんだ」

 

私を見る刹那君の眼差しに浮かぶのは救いを求めるものだった。

目は口程に物を言うというのは本当らしい。それを汲み取るのが相棒である私の役目だろう。

 

――刹那君はまだ諦めていない!

 

ひとまずここまでかしら。

刹那君は自分の状況を冷静に把握できたようだ。

 

ならば共に立ち向かえるかもしれない。