【北條紗希】
車二台に別れて佐久家へと向かうことになったのだが・・・
今回ばかりは私が運転すると言ったんだけど刹那君は譲らなかった。
ここは刹那君に運転を任せるべき?
→刹那君を信じる
「ならお願い・・安全運転でお願いね」
そう言ったら刹那君は任せておけと言い切った。
無精ひげも剃り、シャワーも浴びこざっぱりしている。
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不覚にもドキリとしてしまった。なんというか普段から男気溢れる刹那君だけど今の彼の表情には壮絶な色香があったからだ。
助手席に乗り込んだ私は刹那君の運転する車で一路佐久家へと向かった。
これは本部長の指示ではない。だからこそ慎重さが要求される案件だった。
昼なお暗い一画に佐久家の広大な屋敷はあった。気のせいでなく屋敷の上空には暗雲が立ち込めていた。
屋敷の中には広大な庭があるのに木々にとまった蝉が鳴く音すらしない・・
まるで時が止まったような静けさに満ちていた。
下車した途端、ヒールがなにかを踏んだ乾いた音がした。
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足元を見ると一面びっしりと蝉が腹を見せ散乱している。
残暑の風物詩ではあったがこれだけ多いと異様な光景だった。
ジジジと鳴きながらピクピクと足を痙攣させ、命がつきかけた蝉に刹那君が重なってしまい思わず唇を嚙みしめる。
これはおとり捜査だから刹那君がまずは一人で中に入る手はずになっていた。
命綱は如月先生がくれたお札だけ・・
念のため刹那君は盗聴器をつけていたけど、霊障で遮断される可能性もある。
どんな些細なミスも許されない。
「じゃ・・・行ってくるぜ」
硬い面持ちで言う刹那君に頷き返して送り出す。
相手が心霊じゃ銃の携帯も意味がない・・・
切り札はライアーズアートだけなのだと改めて実感する。
私は葉子さんがどんな女性だったのか知らないし、彼女の望みもわからない。
彼女の未練を断ち切るために対話によって明らかにすればきっと道は開けるはず・・・
刹那君は絶対に守って見せる!
それは刑事として・・そして女としての決意だった。