【愛染刹那】

 

この家は静かすぎる・・・

そして佐久葉子はあまりにも気配が異様だった。

 

これまでも何度か怪異と思しきもの達に遭遇したことはあった。

直近では紗希にとりついていた隙間女だが、あいつは悪意や憎悪をばらまいていた。

 

しかし目の前の葉子さんからはそのどれもなかった。

そっとこちらを窺う視線は感じるが決して視線は合わせない。

奥ゆかしい人だといえばそれまでだが、絡みつくような執拗な視線がその清楚さを裏切っていた。

 

そもそも人妻と過ちを犯すことなどありえなかったが、それでも上品な色香を漂わせた葉子さんは魅力的だった。

 

だからといって惚れているわけではもちろんない。

 

困っていた寂しそうな彼女を放っておけなかっただけだ。

 

そんな俺に葉子さんは何を望んだのか・・・?

 

俺が金持ちだと知らない紗希はなぜ俺なのかしきりに首をかしげていた。

 

裕福な男を物色している・・という前提が成り立たないからこその困惑だったのだろう。

 

もし葉子さんの目的が金持ちとの結婚であるなら俺は条件を満たしているのだ。

 

彼女の望みが分からずずっと違和感があったが、それは今もってそうだった。

 

葉子さんが物欲まみれの女だとは今もって思えない。

 

そもそも彼女はいまだに佐久の妻であり、善一はまだ存命で、金に困っている様子もない。

 

やはり葉子さんは紗希の言うとおり男を惑わし生気を吸い取る死霊なのだろうか?

 

ならその証明は一つしかないよな