【北條紗希】

 

しかしそれからが大変だった。

刹那君は病院に運ばれ、私も相棒として付き添うことになったのだが・・

 

一方で現場に残った纐纈さんと新美さんは死人の中に葉子の姿がなかったことから庭ではなく屋敷内部だと当たりをつけ、彼女が出現した屋敷の奥の間の畳の下から変わり果てた葉子を発見したのだった。

 

一課もかけつけ屋敷の中はくまなく捜査されたのだが・・

 

葉子がいなくなると同時にゾンビはただの遺体に戻った。掘り返さずに済んだことで一挙に事件が明るみになったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。

 

とはいえ、亡くなった方は戻ってこない以上、手厚く葬り冥福を祈ることしかできないだろう。

 

一課でもない「とくそう」の人間が令状もないまま捜査したことで田中課長には散々嫌味を言われたが、闇に葬り去られずに明るみになったのだと思えば結果オーライだった。

 

刹那君の危機だっただけにお咎めなしだったし、改めて本部長に報告書を提出するだけで済んでよかった。

 

佐久葉子は他殺だったため、一課が捜査をすることになった。

 

後日別件で湯田という男が逮捕されたのだが、余罪を追及中に佐久家に押し入りちょうど居合わせた葉子を手にかけたことを自白した。

 

驚いたことに湯田はかつて佐久家の使用人だったというのだ。

だからこそ内情に詳しかったが、使用人が一人また一人と失踪したことで恐ろしくなり辞めたが、生活が立ちいかなくなり魔が差したのだという。

 

本当に思った以上に大事件だった。

 

使用人も夫もいなくなったあの広大な屋敷で葉子はたった一人で亡くなった。

 

ふと「雨月物語」の「浅茅が宿」を思い出した。亡くなった後も夫の帰宅を待ち続けた献身的な妻の話だった。

 

そこだけ見れば美談ではあったが、葉子は刹那君をはじめ屋敷の使用人達も手にかけていた。

 

それはやはり許されることではない。

 

葉子が命を引きとった後、ほどなく夫も亡くなり、そして共に黄泉路に旅立つことになった。