【北條紗希】
私の慢心が刹那君をみすみす危険にさらしてしまった。
ライアーズアートを過信していたのだと潔く謝罪した私に「気にするな」と刹那君は言った。
「らしくねえぞ紗希顔をあげろ!・・それを言うなら俺だって上手くやれるって調子こいた結果があれだからな。我ながら青くせぇ・・・葉子さんをとことん信じたしわかりあえると思ってたが甘かった。あの人にどんどん同情した。こうだと思ってもミスることはあるさ・・確かに今回はヤバかったがお前のライアーズアートのせいじゃない。
あの人は・・・悲しすぎて八つ当たりしたかったんだろ・・・」
だから気にすんな・・・と刹那君は締めくくった。
そうかもしれない。いえ、そうなのだろう。
確かにそうだ・・・どうしようもない絶望で自暴自棄になりかけたことは私だってあった。
二度と相棒を失いたくなかったから・・
刑事だからミスは許されないと戒めてきたのに・・
今回自分の手法の限界を思い知らされてしまい打ちのめされそうになったのは紛れもない事実だった。
だけどやはり私にはライアーズアートしかないから・・
だから今回の失敗を受け止めて次に生かすしかないのだ。
私は必ず乗り越えて見せる!
落ち込むより先にできることはあるはずだから・・
病室を出る時刹那君が「おい!お前こそ相棒の俺がいるってこと忘れんなよ・・紗希」と言った。
ああ・・そうだった。
私はまた一人で背負いこんでしまうところだった。
私一人では役不足かもしれない、でも力を補えあえる「相棒」がいるのだから
これほど心強いことがあるだろうか?
回想に耽っていたら突然電話が鳴った。黒電話ではなくてスマホだったが、如月先生からだなんて不吉な予感がした。
案の定、回収されたはずの佐久葉子の遺体が忽然と消えたというのだ。
やはり今回の事件もFOAFが暗躍していたのかもしれない。
私の脳裏に夜の繁華街の雑踏に消えてゆく着飾った女の姿が浮かんだ。
名前も素性も今となってはわからない。
私達が明らかにできたのは一端だけ、真相は闇の中だった。
