窓辺で伺っていた私の注意をひいたのはクーフィーヤ姿の貴人だ。

 

―――あれは?

 

どうやら警備が厳重なのはあの貴人と密談のためのようだ。

護衛を引き連れたラムル様に対し、クーフィーヤ姿の貴人の方は単身だったことに違和感を覚えた。

 

恭しい態度のラムル様の対応からも相手はかなり身分の高い相手なのだろう。

 

国でも屈指の大貴族のラムル様に拝礼させることができる相手なんてそうはいないはず・・・

 

まさか王?

 

咄嗟に浮かんだのはこのシャナーサ国の王ライザール・シャナーサだった。

 

名君だと評判の方だけど・・そんな方がラムル様となんの密談なのかしら・・

 

まいったわ・・やりづらいわね

 

ラムル様から密書を手に入れるのが店主様から命じられたことだけど、その障害となりうるかが気になってしまう。

 

お忍びなのか護衛はいなかったようだけど・・

 

ライザール様は独断専行がすぎるとの噂通りなのかもしれないわね。

 

あるいは信頼できる部下がいないのか、腕が立つから護衛は不要と思われてるのかまではわからない。

 

あれがもし王ならば想定外の事態だといえたが、けれどこちらも密偵(プロ)としてしくじるわけにはいかなかった。

 

気持ちを切り替えてその場をそっと離れた私は男子禁制の女の園へと足を踏み入れた。