接客は私の仕事ではないんだけど店主様から「ご指名だからよろしく頼むよ」って言われてしまってはね・・
いえ、むしろ昨夜の失態を挽回できるチャンスかもしれないわ
おそらく密書はまだこの方がお持ちのはず・・どうやって手に入れればいいかしら?
心を落ち着けた私は舞妖妃として振舞うことにした。
大貴族だけれどラムル様は穏やかな人柄のようだ。
でも気のせいかしら?意志の強そうな琥珀色の双眸がその物腰を裏切ってるような・・・油断はしない方がよさそうね
酒臭い息を吹きかけたり脂ぎった手で体に触れてくることもなく和やかなムードで会話をしていた時のことだ。
「そなたを見込んで頼みたいことがあるのだ・・聞いてもらえるか?」
突然のラムル様の言葉は私を困惑させるものだった。
「私にできることであれば・・なんでしょう?」
相手の出方を窺いながら用心深く尋ねた私の手にラムル様が小さな筒を押し込んできた。
これは・・・?
それは密書を入れるための筒だった。恐らく調教された鷹などの鳥の足に結ばれて運ばれたものなのだろう。想像よりもはるかに小さな筒だった。