「・・・その動画はどうしたの?」

 

それは存在してはならない動画だった。

架空の産物とはいえいかがわしい動画を相棒に握られたままなんてどんな顔をすればいいのか・・

 

すると刹那君は「削除したから安心しろ」と言ってくれた。

 

刹那君の言葉を私は信じる。ううん・・信じないとやってられないからだ。

 

「ならいい。さっさと忘れましょう」

 

これで解決とばかりにそう言ったら刹那君は頷いた。

 

「だな。俺もそれでいい。・・けどいったい誰が送ってきたんだろうなあ?悪趣味にもほどがあるぜ」

 

――そうだった

 

私の脳裏にカルト組織の陰謀論が浮かんでしまう。

 

彼らならやりかねない・・

動画がない以上・・・もちろん復元は可能かもしれないけど・・

今となってはオカルト事象なのか科学事象なのか証明は不可能だった。

 

相棒に不埒な想いを見咎められた気まずさだってあったけど・・

それなのに不思議なほど私の気持ちは凪いでいた。

 

現実に繋がることはできなかった相手とどのような形であれ成就したのだから。

 

昼食を終え車に乗り込むと刹那君が安全運転で発車した。

 

いつもながら快適な乗り心地だったけど・・助手席で車窓を見ながらつい関本とのやりとりを思い返してしまう。

 

彼とは多くの言葉を交わしたけど・・もちろん彼の隠し事を暴くためのものだった。

 

それすらも今となっては甘い思い出だなんて・・・

 

今は亡き彼へと想いを馳せた私を刹那君はそっとしておいてくれた。