平静を装いながらも悲しみを置き去りにした私にゼノは共感してくれたし、バースの縁で親しくなったカナタやタイラーにも気を使わせてしまっていた。

 

だけどもう放っておいてほしかった。

 

いつか時が解決してくれるはず・・そう信じるしかなかったのだ。

 

補佐官になったレイナは守護聖と交流していたし、ロレンツォとも時々は会って食事をしているようだった。

 

今日も仕事の後レイナが声をかけてきた。

 

「貴女も一緒にどう?気晴らしも大事よ」

 

良かれと思ってのことであっても、プライベートでロレンツォと会う勇気はなかったからもちろん断った。

 

「私のことは気にせずに楽しんできて」

 

心にもないことを言える自分が嫌だった。

ロレンツォに多くを求めないレイナはかなり気に入られてるのがわかるだけに悔しかった。

 

「わかったわ・・なら今度は二人で映画でも見に行きましょう?チケットがあるから遠慮しないで」

 

レイナを見送った後、彼女が置いて行ったチケットを見ると今オウルで流行している話題のラブロマンス映画だった。

 

しかも悲しい別れを描いた作品らしい。

今の私の気分にぴったりだといえたけど・・

 

笑えないわね