一方ロレンツォは、神妙な面差しのままレイナと約束をしたレストランへと向かっていた。

 

目的はアンジュの近況を知るためでもちろんデートではなかったが互いに有名人だけに本来なら個室を用意すべきだったが人の口に戸は立てられぬ以上、噂に尾ひれがつくのはどのみち避けられそうになかった。

 

レイナの方は仕事帰りなのかいつも通りの様子だったが、やはり気がかりがあるのか憂いが見え隠れしていた。

 

「それで最近はどうだい?アンジュは元気かな?」

 

それに対するレイナの答えはため息ひとつだった。優秀なだけに補佐しきれない苛立ちがあるのだろう。

 

女王試験の時こそバランスをとるために彼女とも幾度かデートをしたが結局レイナとは艶めいたやりとりはなく今もって守護聖と補佐官としての仕事上の付き合いだけにとどまっていた。

 

男としての私の心を求めたアンジュに対してレイナが求めたのは私の支持だけだった。

 

もちろんライバルへのあてつけもあっただろうが・・私だって駆け引きはするさ。

 

互いに女王候補だったとはいえ、当初は秀でたレイナが勝つと誰もが思っていたが成果を出し圧倒的な支持を得たのはアンジュだった。

 

失恋をばねに結果を出したアンジュが女王になり手の届かない存在になってしまったのだと思えば感慨深かった。

 

男として彼女に応えることはできなかったがせめて守護聖として

アンジュの支えになりたかったのだが・・・