夢の中で当時のように大学近くのカフェでコーヒーを楽しんでいたらいつの間にか目の前にアンジュが座っていた。
私より少し年上のアンジュは大人びた表情だったがどこか憂いを含んだ眼差しをしていた。
彼女の前にもコーヒーが置かれていたがカップには手を付けた様子もなく彼女はまたひとつため息をついた。
恐らくバースでOLをしていた頃の姿なのだろう・・
仕事の合間の息抜きに会社近くのカフェでコーヒーを飲んで気分転換をはかっていたと彼女から教えてもらった覚えがあった。
元気づけてやりたがったが彼女と私の間には次元の壁がありけっして言葉を交わすことはできなかった。
いや・・心の壁なのかもしれない
同じ聖地にいながら言葉を交わすことも久しくなった私がそんな風に思うなんて皮肉だった。
しばらく落ち込んでいたかに見えたアンジュだったが空腹を感じたのかウェイターを呼びケーキを注文した。
甘味を頬張るアンジュに女王候補の片鱗は見受けられなかったし承認欲求こそ強いがどこにでもいる花でしかなかった。
冷めたコーヒーには結局口をつけずに彼女は立ち去った。
・・・意味深なことだ
私を知らなかった頃のアンジュはそれなりに満ち足りていたのだろう。
彼女がその頃の生活を大事にしていたなら故郷を失ったことは辛かったに違いなかった。
未練が一切なかった私とはあまりにも違う感性の持ち主だったから興味を持ったのがきっかけだった。