「私との話を覚えてるかな?」
おそるおそる尋ねてみたらアンジュは小さく頷き返した。
「ええ・・・覚えてます。あれは本当?」
我ながら醜態をさらしただけに少々気まずかったが、アンジュの真摯な眼差しの前に嘘などつけるはずもない。
惚れた方が負けだというのは本当だったようだ。
きっと彼女より私の方がアンジュに惹かれている。
だからこそ過剰に反応してしまったのだろう。
「ああ・・間違いなく本当だよアンジュ。どうやら私は君に本気になってしまったようだ。これまでは面倒を避けてしまっていたが、私はこの重みを背負おうと決めた。だから君も見ていて欲しい・・これからの私を」
口説くことはあったが真剣な告白などしたことはなかった。
だからこんな甘やかな瞬間が自分に訪れたことはとても感慨深いものだった。
だが恋に落ちるというのは存外悪くないものだ。
新たな自分に出会えるし可能性も広がるのだと思えば気分が良い。
私の知らなかった魅力に気づいてくれたアンジュに報いたかった。
だから私も彼女が気づかない魅力を発掘できるのを楽しむとしよう。
そうやって少しづつだが手探りでゆっくり進んでいこうか。
他人だった私達がかけがえのない存在になるための試練は始まったばかりだ。
一つ一つの瞬間を楽しめばいい・・良いことも悪いことも共に乗り越えよう。
君とならばそれができると私は信じているよ・・アンジュ。