「無粋な方ですね・・・・邪魔しないで欲しかったなあ」
どこか剣呑な様子でヴァージルがロレンツォを睨んだけど、ロレンツォの方は気まずさのかけらもない様子で応じる。
「公共の場で女王候補を口説くのは守護聖としてあるまじき行いなのでは?」
傷心の私と違ってロレンツォがいつも通りだったことが悔しかった。
ああ・・やっぱり私のことなんて眼中にないんだわ・・・
わかっていたことだけどまた傷ついてしまうのを止められそうもなかった。
少しでも嫉妬してくれたら・・なんてあり得ないのに。
ああ・・泣いちゃダメよ。そう思うのに悔しすぎて我慢していた涙がこぼれそうになってしまった時、再びヴァージルに抱きしめられていた。
私の頭を覆うように抱き寄せられて安堵してしまう。
よかった・・これでロレンツォに泣き顔を見せなくて済む・・
思わずそう思ってしまった。
「これは失礼・・どうやら本当にお邪魔してしまったようだ。私は退散するとしよう」
ロレンツォがそう言って立ち去る気配がして悲しみと安堵と思慕が募ってゆく。
だけどこれ以上この場に踏みとどまることもできなくて、そっと身を離したヴァージルをその場に置き去りにして逃げるように立ち去ることしかできなかった。
なぜヴァージルがあんな態度をとったのかはわからない。
私は他人の気持ちに鈍感すぎたのだろうか?
あるいはヴァージルにとっては仲の悪いロレンツォへの対抗意識だったのかもしれなかったけど深く考えることはできそうになかった。