「そういうお前は一人で行動しているようだが?」
さりげなく身辺調査がてら尋ねてみるとシリーンは肩をすくめた。
「狩り友はいるわ。でもあの子ったら気まぐれですっぽかされちゃったのよ。だけど平気よガルクだっているしライラだっているんだから」
ライラというのはどうやらオトモアイルーのことらしい。
先ほど私の荷を奪ったノラどもとはわけが違う。
人語を解し訓練を受けたアイルーはハンターの良きパートナーだった。
「なるほど。それは心強いな」
「そうなの。でも今回は救助だからキャンプでお留守番よ。今頃は夕飯の魚を釣ってると思うけど・・あの子お魚大好きだから食べちゃわないかしら」
大丈夫だろう・・たぶんな。
カムラの里でも団子屋でいきいきと働くアイルーたちを見かけた。
主の娘と信頼関係を築いており見事な連携で団子を作る過程をショー仕立てにして披露していた。
私だってカルゥには絶対の信頼を寄せている。
主従とはそんなものだ。
「そうなんだけど・・あの子ったら金目のものに目がないし抜け目ない子なのよ。いったい誰に似たのかしら。」
どうやらオトモアイルーはコレクトタイプらしい。
なるほど・・盗賊スキルを持ちライラという名か・・
どうやらシリーンもライラ・ヌール・・つまり私のファンらしい。
オトモにライラとヌールと名をつけてるあたりで隠しようもないな。
懐に隠した王印に触れながら妙案を思い付く。
王印にはかすかにマタタビの移り香があった。
王印は王の証ともいえる重要なものだ。
もし彼女ほど責任感のある女が手にしたらどうするかな・・?
安易に人手に渡せるものではない。
返すためにいずれかの時点で私に出会うことになるだろう。