「貴重な物の価値をわからぬよりはいいだろう?」
そう答えるとシリーンは苦笑した。
「それはそうかもしれないわね。貴方いいこというじゃない」
そう言ってシリーンは微笑んだ・
お前にとって貴重なものとはなんだ?宝石か?命か?信条か?
尋ねたいことはたくさんあったが根掘り葉掘り聞くのは無粋だったから控えることにした。
休憩した後、約束通りロックローズの採掘場へ案内してもらえた。
一般人の私を連れているため安全第一なのは感心なことだ。
その道すがら彼女の解説付きのツアーを満喫することにした。
エンエンクをはじめとする貴重な環境生物や大玉サボテンなどの植物を前に好奇心で目を輝かせるシリーンの姿を見るにつけより心惹かれてしまう。
彼女ならば砂漠デートにも付き合ってくれそうだ。
婚前旅行にテロメアーナの坑道に行くのも良いな。
こんなことついぞ考えたことはなかったがにわかに現実味を帯びてきたようだ。
小休止時には熟した灼熱イチゴに舌鼓を打つ。
まさに砂原の恵みに感謝だな
操竜にも使った翔虫を駆使して崖を登った先にロックローズの鉱脈はあった。
まさに砂漠に咲いたバラのごとく美しい石だった。
かつてシャナーサの砂漠でテロメアーナの鉱脈を発見した時の感動が蘇る。
過酷な環境だからこそ生まれた貴重な鉱石だった。
ぜひとも手に入れたいものだがあいにくと私に採掘権はなかった。
だがシリーンはハンターだから小さな欠片を採取すると記念にくれた。
かすかにバラの香りがする。
「ありがとうシリーン。出会いの記念に大事にしよう」
シリーンと会いロックローズも手に入れて目的は達成できたようだな。
だがまだだ。もっともっと彼女のことを知りたかった。