※ライザ視点です

 

尋ねてみたかったが今は時期尚早だった。

たとえ親子であってもこれだけの長い期間赤の他人として生きてきたことを思えば互いに猶予は必要だった。

 

血の繋がりだけが親子ではない。シリーンにとってあの二人は大事な家族なのだ・・

 

かつてライザール王は私にそうおっしゃった。

時間をかけて絆を培ったシリーンの弟を家族だからと奪うことはやはり躊躇われた。

 

「それよかおふくろ・・この場所から出ていいってさ・・俺、部屋を借りたから日当たりがいいところに住みたいって言ってただろ?」

 

この土地と建物が国に没収されたらこの場所に隠れ住むのはやはり難しいだろう・・

 

彼女がどれくらい長い間この場所にいたのかはわからなかったが、目覚ましい発展もある一方古式ゆかしい文化も根差すためそれほど違和感は覚えないかもしれない。

 

「つか・・ちょっと顔貸せよ」

 

さすがに立場上見過ごすことは難しかったが、互いの状況確認をした上ですり合わせた方が無難かもしれない。

 

また歌を口ずさむグレースを残し無機質な廊下に出ると、ジェミルは親指で天井に取り付けられた装置を示しながら言った。

 

「監視カメラ見えんだろ・・店主に見られたくねえから死角で話そうぜ」

 

監視カメラとは遠隔操作でこちらを監視できるものらしい・・

 

そしてその装置の向こう側に店主がいるとジェミルは確信があるようだったので大人しく従うことにした。