※店主視点です
呆然とするレイラに構わず待機していた部下に託して背を向けた時のことだ。
――どうして・・・どうして邪魔をするの・・・?
異変を感じて振り向くとシェーラがこちらを見上げていた。
どうやら憑依現象が起きているらしい。
駆け落ちしたレイラだが美しくないからと否定されたことで発作的に自傷行為におよんだようだ。
そして桃源郷であらゆる美の手解きを受けたがツケはたまる一方で払う当てもなくアイーシャの提案にのりシェーラの顔になることを受け入れたが、同じ男との因縁があったことと死者の顔を用いたことでいつしか彼女はシェーラと同化していったようだ。
元は明るく聡明だったシェーラだが愛する者の手にかかり絶望したことで歪んだ存在になり、ライザールの愛を受けたシリーンを妬ましく思う気持ちが強まったのだろう・・
だが死者はこの世界に干渉はできない。だからこうして恨み言をいうだけの悲しい存在でしかない。
シェーラとシリーンはグレースから生まれた娘で同じ男を愛したが、少しの差が大きく隔たった結果を生み出してしまった。
「すまなかった・・・シェーラ。だが死者は留まってはいけない。光に還るがいい」
死者がどこへ行くかなど私にもわからない。混沌に還るのかもしれないし消滅するのかもしれない。
だが作り出した責任者としてその魂の冥福は祈ろうと思う・・
再び額に手を翳すとスーッと一滴の涙がこぼれたがレイラは意識を手放し、霊的な気配は立ち去ったようだった。
残留思念のささやきも微かで消えていく。
・・・ライザール・・・さま・・・さようなら・・・
身も心も明け渡すような自暴自棄の依り代がなければ戻っては来れない。
奇跡など二度は起こらないものだ。
後日ライザールと破局したシリーンがルーガンに傷心旅行に行ってしまった時は冷やりとしたがね・・・![]()
だけど彼女は強い魂の煌めきを持っていたから心配はしていないよ・・いかなることがあろうと自分を見失うことはないさ・・