※ライザール視点です

 

それにしてもこの茶番を仕組んだのは店主だがシリーンは気にした様子もない。

 

いささか無防備な気がしたが、何もいうまい。

 

「ああ・・シリーン。真実の愛を得ることができたんだね・・よかった」

 

まるで娘を慈しむ父のような店主の態度にジェミルが嫌そうに顔を背けた。

 

「そうなの・・ライザール様のおかげよドキドキ

 

しみじみと言うシリーンを見ていたら本当によかったと私も感慨深かった。

 

「ねえ・・私達の血でアイーシャは滅んだのでしょう?」

 

シリーンに尋ねられた店主はやっと種明かしをする気になったらしい・・

 

「彼女は美と若さを手に入れるために多くの娘達を手にかけた。その怨念は術者である彼女を黒く染めてしまったんだ。どうしようもないほど・・ね。だから私は君たち二人の血を飲ませることにした。私にとっては極上の秘薬だったが・・彼女には反作用となってしまったようだ・・塵になってしまうほどね」

 

反作用と店主は言ったが、黒魔術に身を染めたアイーシャにとっては愛情で深く結ばれた私達の血は毒となったのだろう・・

 

当然結果は予測した上でのことだろう・・なかなか容赦のない男のようだ。

 

「もうここには用はねえだろ?さっさと撤収しようぜ」

 

ジェミルの一声で我に返った私はシリーンに声をかけた。

 

「私はまだ事後処理がある・・送ってやれなくてすまないな」

 

オーナーが消失した以上、この店は国の管理下に置くつもりだった。

 

そのためには入念な事後処理が必要だった。

 

こんな夜に一人にしておきたくはなかったが、しかたない。

するとシリーンは静かに首をふると私の腕にそっと手を添えて言った。

 

「ねえ・・もう少し一緒にいてはダメ?」

 

彼女にしては珍しかったが、だがやはり人恋しいのだろう・・

その気持ちは汲んでやりたかった。

 

それにタトゥーを失い不安なのかもしれない・・・

彼女を慰めたい男ならすぐ隣りでこちらを睨んでるからな・・油断大敵だった。

 

「いや、構わない。では共に来るがいい」

 

 

そう答えるとシリーンは極上の笑顔で頷き返した。