思えば私自身王宮に乗り込んだ時はこうまで長く居座る羽目になるとは思ってもみなかった。

 

王に謁見して民として直談判できただけでも目的を果たせたはずだった。

 

だが実際に会った王は能ある鷹は爪を隠す類の男だったが虚弱体質のうえ、臣下から軽んじられなめられまくっていた。

 

語り合ううちに意気投合してしまい私の理想に王は賛同してくれた。

 

ライザの強い勧めもあり王を代行することになってしまったのだ。

 

そうして彼が置かれた現実に直面した私は、理想と現実の乖離がどれほどのものか孤軍奮闘する実態をまざまざと思い知らされたわけだ。

 

いつ偽物であると見破られぬかどうか身分詐称しながら動揺を必死に押し隠していたし、自由気ままな義賊だった頃がひどく懐かしくてならなかった。

 

何度も逃げ出したいと思ったさ・・

 

だが幸運にも得ることができた出会いがあればこそ得た地位だったから二度も奇跡が起きるとは思えなかったし、我が身の保身よりも大事なことがあった。

 

初心貫徹というやつだ。面の皮だけは誰よりも厚い自負もあったんだ。

 

シリーンのような悲しい少女を作らぬために・・・

 

めげずにこの9年心血を注いだこともあり理想は少しずつ近づいていた。

 

だがやはり満足とは程遠い。

 

指からこぼれ落ちてしまう弱き者達がいたし、貧富の差は歴然とあった。