アリが慌てたように謁見を求めてきたが、私が会いに行くのがカマルの舞妖妃だと知るやいなや苦言もそこそこに帰って行った。

 

ふん、食えないタヌキ親父め。

 

だがむしろ仮面をつけた私達の逢瀬には相応しいだろう?

 

お忍びではあったが護衛を連れカマルへは馬で向かった。

今夜は大事な夜だから暗殺騒ぎなど起こされても迷惑だ。

 

もし万が一があってもえりすぐりの少数精鋭だからなんとかするだろう。

 

初めて訪れたカマルは名高い踊り子を抱えたサロンだけあって立派な店構えだった。

 

今夜は貸し切りだから他の客はいない。

舞妖妃の公演ならば金を積んでも見たい輩などいくらでもいるだろうが生憎と彼女は私の妻だから諦めてもらおうか。

 

私の登場を待っていたように舞台の幕が上がり楽の調べにのった群舞の踊りが始まった。

 

やがて満を持して舞妖妃が登場した途端舞台の空気が変わった。

 

張り詰めた中にも妖艶で華麗に一心不乱に舞うその姿に目を奪われる。

 

まさに天賦の才・・魂のこもった踊りだった。

 

目の肥えた男達が賞賛するのも無理もない。

ベールで顔を覆っていたがそれでもなまめかしさと匂うような美しさが伝わってくる。

 

王妃のレイラではない彼女がそこにいた。