だが彼女の決意は固く、それが私の妻でいるためなのだと思えば心苦しい反面喜びも募る。

 

もっと大切なものがある、と彼女は言った。

 

その言葉に込められた期待や熱意が手に取るようにわかってしまう。

 

かつて王になることを決意した義賊で青二才だった私には・・な。

 

彼女の姿は昔の私そのものに見えた。

成功するもしないも己の努力次第だったし運だって必要だ。

 

ライザに導いてもらえたからこそ今の私があるならば今度は私が彼女を導く番だった。

 

彼女ならばできるだろう

 

彼女の選択に敬意を込めベール越しのキスをかわした。

特別じゃないキスだってあるがこれは特別だ。

 

なにかにつけ性に合う女だと思える瞬間がある彼女との触れ合いを私自身楽しんでいた。けっして身体だけを求めたわけじゃない。

 

そうして熱い一夜が明けカマルで「舞妖妃」とは別れた。

彼女は必ず戻ると信じて先に宮殿に戻り待つことに迷いはなかった。

 

恐らく逃げ出すならば最後のチャンスだっただろう。

だが彼女は戻って来た。

 

一応朝帰りの身だから妻のご機嫌伺いと称して彼女の部屋を訪れた私を彼女は迎えてくれた。

 

その顔は晴れやかで憂いがなく輝きに満ちていた。

私を見て昨夜の礼とばかりに笑みを浮かべた彼女を可愛い女だと思う。

 

やはり彼女ならば私の共犯者になれるかもしれない。

偏屈な私がそんな風に思えてしまうくらい素晴らしい夜だった。

 

これからもこの場所に残ることを選んだ彼女の覚悟は伝わったが、自分に何ができるのか何をすべきかゆっくりと考えるといい・・

 

まさに通過儀礼でありかつての私も通った道だった。

人生の先達者として若輩の妻に伝えられることもあるし夫として支えることもできる身だ。

 

たゆまぬ努力をするそなたの為ならば私も惜しみなく力を貸そう。

だからたまには弱音を吐いてもいいんだぞ・・私がいることを忘れないでくれ。

 

類まれなるそなたを妻に迎えられたことを嬉しく思う。

 

お帰り・・「レイラ」