行為のあと少しだけ彼の腕の中で会話をかわした。
「これで引退するので最後に良い思い出ができましたわ」
そういえば王がカマルを国営化なさる目論見があったのならこれは明かさない方が良かっただろうか?けれどいずれわかることだった。
「そうか・・あれほどの踊りの名手が残念なことだ・・・これからどうするつもりだ」
本当に残念そうにおっしゃるのね・・私だって名残惜しいわ
・・でも・・
「もっと他に大切なことが見つかってしまったので・・・お許しください」
貴方との婚姻を私は選んだ。それは踊り子でしかなかった私に新たな夢への扉を開いてくれるものだった。
だからけっして後悔はないわ。
そう言ったらベール越しにキスされた。
あ・・・ここでキスするなんて・・ずるい![]()
「そうか・・それを聞いて安心した。そなたならどのような夢であろうが努力を惜しまぬ限り叶うであろう・・せいぜい精進するがいい」
それは思いがけないほど温かな言葉だった。
「ええ・・そうします」
妻の立場でいたら見えなかったライザール様の優しさに触れることができてよかったと思う。
だけど本当に気づいていないのかしら?
私の良いところ全部知られてた気がするのは気のせい?
夫だけど別の方みたいに思えたくらい情熱的だった。
あんなに乱されてしまうなんて・・思い出すだけで恥ずかしいわ
だけどもちろん確かめるような無粋な真似はしない。