コーヒーを楽しみながらそっと彼女を窺う。

 

本当に絵になる美しい女だが貴族ではなかろう。

貴族の女どもときたら上品ぶりながらも露骨に媚を振りまくか高慢ちきな態度で男を値踏みするものだ。

 

このような見目麗しい妙齢の娘が噂にものぼらないことなどあり得ない。

 

大方貴族の隠し子か、もしくは商売女の類だろうが・・

 

あるいは・・密偵だな。

 

先ほどの一連の出来事はそれを裏付けていた。

惜しいな・・なぜなら・・

 

私のシリーンをどこか髣髴とさせる女だからだろうか?

 

一目見た瞬間、追憶に絡めとられそうになった。

瞳や髪の色、年の頃もあう・・・

 

ある日忽然と彼女は姿を消し、似た面差しの女が唐突に現れるとはな・・

 

私が知るシリーンはどこか影があり我慢強くとても繊細な娘だった。

 

守ってやりたかった・・なのに私は彼女の手を離してしまった・・

そして失ってしまったのだ。

 

だが今でも時折思い出すのは彼女の泣き顔ではない。

 

・・ありがとう・・私ね・・ルトのこと大好きよ・・・

 

そう言ってはにかむシリーンの優しい笑顔だ。