怒りを買った時はどうなるかと思ったけれど、王の印象は今もって悪くない。
なかなか計算高い方のようね・・・暗愚な王ではないのは確かだった。
私の行動に不穏なものを感じていたとしても暴こうとはなさらなかったし、今はまだ事を構える気はないということ。
私を差し向けたアリ家の忠誠の程を量りたいのだろうし、私自身を見極めるつもりなのかもしれない。
泳がされたのだという気がしてならなかったけれど、私の方もそれで構わなかった。
もう少し貴方のことが知りたい・・それにまだ諦めたわけじゃないわ・・
ヘナタトゥーがなくたって誘惑してみせるんだから・・・
けれど気がかりは他にもあったの。
それは共に潜入中のジェミルのことだった。
この宮殿のどこかに潜んでいるジェミルとはあえて連絡は絶っていた。
店主様への連絡役は必要だったし、共倒れになるわけにはいかなかったから。
だから今もどこからか私を見ている視線は感じていたのだけど・・
ヘナタトゥーを失ってしまったこと、恐らく遠からずジェミルも気づいてしまうわ。
店主様への報告を見合わせてしまったけれど、ジェミルはあえて見逃してくれると思う。
あの子は店主様を嫌っていたから・・・
それに以前から私がヘナタトゥーをすることに反対していた。
なぜかはわからないけれど、それがあの子なりに私を心配してくれてるからだってことだけはわかっていた。
だからむしろヘナタトゥーを失ったことを喜んでいるかもしれないわ・・