※ライザール視点です

 

「相手が何者であろうとも不足はない。シリーンを取り戻すだけだ」

 

トイはシリーンの居場所の情報ももたらしてくれた。

 

表向きは「桃源郷」という男子禁制の会員制の美容サロンらしい。

その場所は9年前にライザの報告でもあがった店だったが大貴族の夫人の御用達の店だけに決め手に欠け手出しできずじまいだった場所だった。

 

王であるからこそ家臣の遊興の場を奪えないこともある。気の利いたサロンならなおさらだった。さしずめカマルが男の社交場であるなら「桃源郷」は女の社交場でありどちらも胡散臭さでは大差なかろう。

 

それを裏付けるように夜な夜な怪しい連中が出入りする場所でもあったようだ。

 

なによりも注意を引いたのはヘナタトゥーを施術できる店であるらしいことだ。

 

もちろん類似の店は多数あろうが、当時のシェーラの身分を鑑みれば「桃源郷」はいかにも怪しかった。

 

シェーラは商人の娘だったが、私に輿入れするために大貴族の養女となっていたから、最後の磨きをかけるためにサロンに足を運び知らぬうちに利用されたのだろう。

 

当時は心の隙をつかれた女心を思いやることもできなかったが・・

父が強引に進めようとした見合い話が彼女を追い詰めてしまったのかもしれない。

 

私の心変わりを恐れたのだ。

 

結局シェーラの実家の両親や一族郎党は処断されたが、大貴族の方は手出しができなかった。その大貴族こそシリーンを差し向けたアリ家だった。

 

だがアリ家は大貴族だが謀反を企むような輩でもないし、今回もおそらく利用されただけに違いない。

 

どのみち滅多なことでは断罪などできはしない。

 

 

2021年4月2日公開