※シリーン視点です
主不在のまま店主様の部屋をあとにして踊り子の楽屋の前を通りかかった時のことだった。
随分と盛り上がっているらしく、何事?と思いながら顔を出すとバックダンサーの娘の一人がこちらに気づき声をかけてくれた。
「あ、シリーン!これなんだけど~最近ベストセラー入りしたみたいだしよかったらシリーンもこの本読まない?カリスマ美容師マイルズ様の美の伝道書」
差し出しされた本を受け取りタイトルと中をざっと見たところどうやら美容関連の書籍のようだった。
マイルズ・・という人物による「永遠の美と薬学」という胡散臭い本だった。
なんとなくひっかかるものがあった。
――そうだわ!
これと同じ本をアスラが持っていたことを思い出す。
もしかしてなにか関連があるのだろうか?
私はまったく知らなかったけれどダンサーの娘達の反応を見る限りかなり流行っている本のようだった。
今は急いでいるけど・・もう少し詳しく聞いてみてもいいかもしれない。
「美容師と言ったわね・・このマイルズさんは店を持ってる方なの?」
すると打てば響くように彼女は答えてくれた。マイルズはあくまでもペンネームらしい。
大通りに立派なサロンを構えているとのことだった。
ヘアカットはもちろん、エステなどもはいっており、美意識の高いお金持ちの女性の社交場となっているらしく会員制の高級サロンのようだ。
私には縁のない場所だわ・・・
会員制ならばどなたかの紹介がないと入店を断られるかもしれないけど・・
でももしそのオーナーのマイルズがアイーシャと同一人物ならば私に用があるはず。
自ら敵陣に乗り込むのは得策とは言えないけれど敵情視察をする意義はあった。
2021年3月31日公開