※シリーン視点です

 

だけど綴られているのはそれだけではなかった。

 

店主様がひそかに匿っていたグレース様がアイーシャに奪われてしまい、そしてジェミルも敵の手に落ちてしまったのだ。

 

なんとか居場所を探し出し親子を保護したものの、グレース様は再び敵の手に落ちてしまい行方知れずになってしまったそうだ。

 

店主様は保護したジェミルを私に引き合わせて家族として受け入れることにした。

 

少なからずグレース様への罪悪感があったからだ。

 

アイーシャも男であるジェミルには無関心だったかに思われたが、だがわざと見逃したのでは?と店主様は勘繰っていたらしい。

 

なぜなら店主様の傍には私がいたからだ。

心を許したジェミルならば疑われることもなく私の傍にいて監視ができるだろう。

 

店主様とジェミルはずっと水面下でひそかな駆引きを続けていたようだ。

 

母親を人質に取られたジェミルはアイーシャの命令には逆らえずに、暗躍していた。グレースを案じる店主様も承知でジェミルを受け入れていた。

 

ライザール様の襲撃犯をジェミルではないかと店主様は疑っておられた。

 

あの子がアイーシャの密偵だと承知でずっと素知らぬふりを続けたのも全部私の為だったなんて

 

・・私があの子を「弟」にと望んだから・・

 

ジェミルはアイーシャの命令を聞く一方で私の為になることも模索していたらしい。

 

だから店主様も見逃していたのね・・・

 

清濁併せのめる店主様だからこそ二重スパイのジェミルの存在を許容できたのだろう。

 

 

 

2021年3月31日公開