ライザは頷くと袖の中から小さな壺を取り出したかと思うと差し出した。

 

「どうぞお使いください・・怪我に効きますから・・ご無事でなによりでした、ライザール様。その軟膏はお持ちください」

 

慇懃無礼なほど丁寧な物腰だった。洗練された王族ならではなのだろう。

 

貴族連中は弱腰の王だとぬかしていたが、ライザは聡明で立派な人物だったから私は意気投合したのだ。

 

だが私は到底ライザにはなれぬから我流でやらせてもらってはいるが・・・

 

どうも女とトラブるのは私の気性のせいかもしれないとも思わぬでもなかった。

 

ライザが愛した女はたおやかで優しい女だったそうだ。

宮殿で生き残るにはあまりにも可憐な野草のような女だったのだろう・・

 

だが私は追憶の彼方の少女シリーンを未だに忘れられぬし、高嶺の花のごとき女に惹かれてしまう。

 

残念ながらそんな女達は得てして内面を伴わないことが多い。

己の美貌を鼻にかけ、傲慢で劣ったものを平然と踏みにじる・・・

 

彼女もそうだと思っていたが、なんというか敵を作らないように振舞っているようだった。

 

八方美人といえばそうだが、たとえば無礼な貴族がいても追従することはないものの、あえてそ知らぬふりをして角を立てないコツを心得ているようだった。

 

自然体でいながら他者の羨望の的で居続けることができるのはある種の才能だろう。そう・・彼女にはカリスマ性があるようだし、王妃向きともいえる。

 

だが淑女であっても夜の営みにおいては少しくらい奔放であって欲しいものだ。

 

その点我が婚約者は合格だった。