実は一人似たような者を知っていた。

 

女というには幼すぎたが、私が大切にしていた少女シリーンだった。

 

なにか恐ろしい目にあったのか、彼女はいつもなにかに怯えていた。

 

私が安全な人間だと信頼を勝ち得るまでに時間を要したが、この女を見ているとシリーンを思い出してしまう。

 

蜂蜜色の瞳と白銀の絹のような髪・・・けっして声をあげて泣かない我慢強さ・・それら全てがシリーンを彷彿とさせるものだった。

 

何者かに虐待されていたのだと思う。だから彼女を守ってやりたかったが、シリーンはある日忽然と消えてしまったのだ。

 

稚い少女すら絡めとってしまうこの国の闇の深さにはうんざりさせられる・・

 

だから私は義賊から王になった。

その私の前に現れた女を前に悔恨の念に苛まれることになるなんてな・・

 

いくら自虐したところでシリーンは戻らない。

 

それに今夜は彼女にこれ以上の無理強いはしたくなかったから解放することにした。

 

暗殺者の捜索の陣頭指揮をとらねばならなかった。

そう思い立ち立ち上がった私の袖を彼女が掴んだ時は驚いた。

 

あんな目にあったのに私に傍にて欲しいと願うとは・・

もの好きな女だと思う。

 

それともやはり示し合わせた罠でもあるのだろうか・・?

 

あれこれ勘繰ればきりがないな。だが・・策謀を巡らせてばかりでは女心を掴めないだろう。だから、己の直感を信じることにした。

 

だがそれで良かったのだろう・・安心しきったように眠る彼女の寝顔を拝めたのだから。