談笑をしながらさりげなく彼女を窺う。

 

皆彼女を見ているようだった。けっして埋没することのない異彩を放つ美女だからしかたがない。

 

やがて段取り通りライザが彼女に紙片を手渡すのが見えた。

まったく意味深だがあれはたんなる鎌かけでしかなかった。

 

談笑を打ち切り彼女に近づき声をかけると、取り繕う気配があった。

 

お前は今誰を想っているのだろうな・・?

 

何食わぬ顔で彼女が飲み干したカップを取り上げて給仕に渡しながら背後を窺うと帯の中に紙片を押し込んでいるのが見えた。

 

とはいえ突然紙を手渡されたら私だって戸惑うだろう。

 

問題は彼女がどうするかだった・・

もし意中の男がいるならば気もそぞろだろうし、理由をつけて退出しようとするはずだ。恋焦がれて自分を見失ってしまうこともありえる。

 

ライザが何を吹き込んだのかは知らないが、まさに目は口程に物を言うというからな。くだらない質問をして私を興ざめさせるなよ?

 

やがて彼女は心落ち着けた様子で視線をテラスへと転じると、中庭で私と散歩がしたいと言った。

 

なかなか賢い女のようだ。

 

愚にもつかない話に付き合えるほど私は暇ではないからな。