私を疑っておられるライザール様だってそう思われているはず・・・

 

案の定ライザール様はなんと答えるべきか逡巡された様子だったけれど、やがて頷かれた。

 

「ああ・・私のことならば心配ない。驚かせてすまなかった。だがこの場所では慣れるしかない・・ここはそういう場所なのだ」

 

・・!!

 

暗殺が日常茶飯事だなんて・・もちろん私だって密偵だからわかっていたつもりだった。でもわかっていなかったのだろう。

 

まさか家族同然のジェミルが暗殺者だなんて・・・そして私は被害者の婚約者で加害者の仲間だった。そんな事態も起こりうるのだということがなによりも悲しかった。

 

考えてみれば私はジェミルのことをあまりにも知らないことに唖然としてしまう。

 

私の可愛い弟で、無口で人見知りで・・シャイな子だわ

勝手に私の服を借りてっちゃうし・・待って、さっきの服・・まさか・・

 

ジェミルが着ていたのは確かに私の服だった・・

 

けれどそこでハッと我に返ってしまう。

 

すぐ隣りでライザール様が私の様子を伺っていたからだ。

 

彼は何も言わなかったけれど視線が絡んだ刹那彼の心が離れていくのを感じた。