ダンスの後ライザール様は皆さまと水煙草を召し上がられて寛がれているようだったから、私もソファで休むことにした。

 

どこにいても王の婚約者の私は注目の的だったから、困惑しながら周囲を窺っていたら声をかける者があった。

 

見ると水煙草を振舞っていた商人姿の男性だった。

 

「よろしければアイラーンはいかがですか?」

 

飲み物も扱っているらしい。だから遠慮なくいただくことにした。

踊ると喉が渇くから塩気のあるアイラーンはありがたかった。

 

「ではひとついただくわ・・ありがとう」

 

冷えたアイラーンを飲みながら水煙草商人を窺う。

ベールを目深にかぶった様がジェミルを髣髴とさせてドキリとしてしまう。

 

ジェミルのことを忘れたわけじゃなかったし案じてもいた。

 

「さきほどの踊り・・とても素晴らしかったですね・・まるで舞妖妃のようでした」

 

 

別に不思議はないのかもしれない。カマルの舞妖妃が当代随一の踊りの名手と評判なのは事実だった。

 

だから私も笑みを絶やさずに礼を言う。

 

「まあ、お上手ね。・・・ライザール王のリードの賜物ですわ」

 

それも事実だった。ショーでは男性とは踊らないけれど公式の場では男女で踊ることもあったから私にとっても新鮮な体験だった。