踊り子で密偵だった私がライザール様に相応しい女なのかはわからない。
大貴族アリ家の令嬢の肩書はしょせん偽りのものでしかなかった。
今はまだ王の婚約者だけれどもし婚姻が整えば王妃の肩書まで追加されてしまうなんて・・・
その場しのぎで欺くだけでどうにかなる話ならもっと気楽だったでしょうけど・・
だけど・・ずっとライザール様のお傍にいたいの・・・!!
なら責任はもっと重大よね。でも私ならきっとやれるわ!
努力は嫌いじゃないし踊り子で得た客あしらいや密偵で得た知識や立ち居振る舞いはけっして無駄にはならないはず。
そして誘惑もね
・・でも誘惑が得意なのは私だけじゃなかったようね。
「・・・レイラ」
名を呼ばれて顔をあげたらキスをされた。
少しだけ罪悪感はあるけど王が呼ばれたのは私よ。
ロマンティックな雰囲気なんですもの・・・いいでしょ
水煙草の香りがふわりと薫ってきたけれど・・確かに素敵なブレンドみたいね。
うっとりするような甘いキスだったわ。
あの後お部屋に送り届けていただいて、王も自室に戻られたんだけど・・
部屋着に着替える時に帯に挟んだままだった紙片に気づいた。
侍女が去り一人になった後に紙片を開いてみたけど何の変哲もないただの紙片だった。