※シリーン視点です

 

一度は救い出せたアスラもその一人だと思われていたけれど今となっては彼女が本当に被害者なのか確信が持てなかった。

 

人気のサロンとはいえカマルの給仕になるための手段としては巧妙すぎた。

 

わざわざトイを雇い隠れ蓑にしたのにはもっと大きな目的があるとしか思えなかった。

 

その目的がはなからカマルに潜入して気取られずに魔術書を持ち出すためなのだとしたら達成したといっていい。

 

だけどまだよ・・カマルには私だってジェミルだっているんだから・・・

 

 

ホームで好き勝手されるのは不愉快だった。

 

だからまずは行動あるのみだった。手がかりはわずかだ・・

 

店主様の部屋で嗅いだ香りはアスラがつけていたものと同じだった。

 

店主様は何もおっしゃらなかったけれど、あの方は髪型を変えても気づかないかも・・・まして女性の香りなんて気にするとも思えないわね・・

 

多数の踊り子を抱えたサロンのオーナーだけど彼女達には無関心なところがあった。

 

先ほどは突然のことで私も言うタイミングを失してしまった、いえ・・アスラを紹介したのは私だから気まずさもあって言い出せなかったのかもしれない。

 

盗まれた魔術書がどのようなものにせよ、普段は冷静沈着な店主様の動揺ぶりを見ればかなりの損失なのだろうということは想像に難くなかった。

 

店主様の研究内容から推測するとおそらく黒魔術の類で不老不死に関するものであるはずだった。

 

 

2021年3月28日公開