※シリーン視点です

 

シェーラ様とライザール様との痴情のもつれは、一見するとありふれた暗殺未遂事件だったが、視点を変えると見えてくるものがあった。

 

王に近づくのは簡単ではない。常に護衛が控えているし、少しでも不審ならば詮議の的になってしまう。

 

それを承知で私は婚約者に成りすますことでお傍に行けたけれど、ジェミルの協力があってこそだった。

 

私は女だから幾度でも揺らいでしまった。それだけ愛する方を傷つけることは躊躇してしまうものなのだ。

 

店主様が気を使ってくださったように私もできうる限りライザール様に苦痛を与えたくなかったから十分な快楽をもたらしてから血をいただいた。

 

またすぐに会えるようにほんの僅かな血をね・・

 

けれど心を渡さない偽りの情であったならばライザール様は気づかれただろう。

 

だからシェーラ様に愛がなかったとは思えなかった。

何も知らないシェーラ様が悪意のある何者かの思惑のために利用されたということはあり得た。

 

タトゥーを持つ私が王を誘惑して血を得たように、シェーラ様を使い王の血を欲した何者かがいたのだとしたら・・・?

 

ライザール様の持つ王の血は店主様に若さをもたらすものだった。

 

時は無情に過ぎ去るものだから、若さ・・それはある意味何にも代えがたいものなのかもしれない。

 

2021年3月27日公開分