※シリーン視点です

 

 『なんでだよ!あんたにそんなことして欲しくねえよ!それくらいなら俺が!』

 

私の血を捧げても誘惑した男達の血を捧げてもどちらにせよジェミルを傷つけてしまうことはわかっていた。

 

『ダメよ・・これは私の問題だもの!ジェミルには関係ないわ!』

 

我ながらひどい言いぐさだと思う。でもそう言い張るしかなかった。

男達を誘惑するのはなにも店主様のためだけではない。

 

この身を翻弄する忌まわしいタトゥーを無効化する方法を見極めねばならなかった。

 

だから後悔はなかった。

 

私と出会う前の店主様の軌跡は知りようがない。知ろうともしなかった。

 

少なくとも出会った直後、彼が老人の姿だったのは確かだ。

 

私とジェミルの血を消費してあの方は生き延び・・

そして王の血を消費して若さも手に入れた・・・

 

犠牲を払ってるなんて思ったことは一度もなかったのに・・・

 

—-だって利害が一致したんですもの・・悪く無い取引だわ

 

——店主様は家族だからどうしても助けたかったのよ!

 

密偵の私とただの女でしかない私の心の声が交錯する・・・

 

その不協和音に気分が悪くなりそうだったけど、どこの家族だって人には言えない秘密の一つや二つはあるでしょう?

 

私達もそうだっただけ・・・

どこかで現実を受け入れて折り合いをつけて生きていくしかない・・

 

歪なのかもしれない・・それでも私は「家族」が欲しかったのだ。

 

2021年3月27日公開分