※シリーン視点です

 

なんだかデジャブを覚えていた。お酒が入りいつもより饒舌になってしまったみたい。色仕掛けの必要のない駆引きだから遠慮はしないわ。

 

実のところライザ様を見るたび私はジェミルを思い浮かべてしまう・・・

 

ベールで顔を隠されていることやその風貌が「弟」を連想させるから・・

 

前はごまかされてしまったから聞き流されると思ったのに・・関心を装うライザ様の本音はうかがい知れなかった。

 

「ジェミルという若者ですね?見知ってますが・・・彼は本当に弟なのですか?」

 

するどいところをつくわね・・さすが。

ジェミルは当時給仕係として王宮の厨房に出入りしていたしライザール様とも面識があるから調査されたのだろう。

 

どう応えるべきか迷うこともなかった。

 

「ええ・・『弟』です。・・・血のつながりはありませんけど。だからイジメないでくださいね」

 

血のつながりはさほど重要じゃなかった。

あの子は私の『弟』で私の『家族』なのだから・・

 

『いいかい‥シリーン、ジェミルが大事ならけっして一線を越えてはいけない。君にとって大事な家族で「弟」なのだろう?』

 

それが店主様の助言だった。

 

そしてそれは私の願いでもあった。だから仮にジェミルが王族の血を引いた子であっても私があの子を誘惑することはこれからもない。

 

それにあの子じゃ張り合いがない気がする。

簡単に手玉にとれて落ちる相手じゃダメなんだから!

 

「そう・・・ですか。なるほど・・・良い弟さんをお持ちなのですね・・」

 

ライザ様はそう言って微笑まれた。

 

密偵として修羅道を生きるライザ様がジェミルをお認めになるかはわからない。

 

似た特徴を持つからと言って必ずしも親子だとも限らない・・

 

ライザ様が王の血筋に連なるならばジェミルも末裔ということになってしまう。

 

もしそうなれば国を揺るがすほどの大スキャンダルになってしまうだろう・・