※シリーン視点です

 

依頼主について尋ねてみたがトイは知らないというように首をふるばかりだったが、思い出したように付け加えた。

 

「・・顔は見えなかったけど・・若い男だった。ベールをしてたんだ、ソイツ。金を渡した時ローブから出た腕もすごく白かった・・この国では珍しいから覚えてたんだ。シリーンみたいだなって後で思ったんだけど・・たぶん匂いのせいだ。シリーンと同じ香りがしてた」

 

店主様にジェミル・・身近な者達の顔が次々と浮かぶ・・

そしてベールと聞き思い浮かんだのは二人だった。

ジェミルとライザ様だった。

 

けれどトイは若い男だと言ったわ・・ならばやはり

 

――ジェミル!?

 

あり得ない話ではなかった。ジェミルも当時私の援護のためにヒラール宮にいたのだから・・それになぜか私の服を無断で持っていくことがあるため服についた移り香が薫ったのだとするとより疑わしかった。

 

私が王宮に潜入中だと承知でトイを仕込んだ?

 

「それで?さっきアスラがいないって言ったでしょう?どういうことなの?」

 

核心をつくとトイはかすかな動揺を見せたが答えてくれた。

 

「言葉通りだよ。俺、シリーンに嘘をついた。俺には確かにアスラって妹がいたんだ。でも妹はもういない」

 

妹を失い孤独と絶望の中、野垂れ死にしそうになっていたトイに手を差し伸べた女がいたそうだ。

 

たとえ思惑がある偽善であっても救われる者はいるのだ。