※シリーン視点です

 

――魔導書?そんなものが本当にあるというの?

 

別に店主様を疑うつもりはなかったけれどにわかには信じがたい。

 

いえ、そうね・・魔導書とされるものならば確かに存在するだろう・・

 

ただの古書としての価値はあるでしょうけど・・

けれど店主様のこの取り乱しようを見ればそれが決して人手に渡っては良いものでないことは一目瞭然だった。

 

ならば恐らく本物・・・にわかには信じがたいけれど私のタトゥーだって似たようなものだし王族の血が秘薬になることだってあるならば魔術もあり得ない話ではないのかもしれない。

 

いえ・・むしろあれら全てが魔術のなせる業ならば納得できてしまう。

 

それと先ほどから気になっていたことがあった。

 

素早く観察した限りでは現場の状況や犯人の手際を見ても内部の事情に詳しいものである可能性が高いということだった。

 

・・・それにこの香り・・・まさか

 

嫌な予感を覚えながら、半ば確信をこめて店主様に問いかけてみる。

 

「犯人に心当たりがあるの?」

 

すると店主様は嘆息されたあと、こくりと頷かれた。

 

「昔私の弟子だった女だ。名はアイーシャという・・だが名前になど意味はない。彼女は多くの仮面を持っているからね」

 

 

店主様に弟子がいたなんて知らなかった。

 

だけど店主様の苦々しいご様子からもけっして良好な関係ではなかったのだろう。