それにずーっと憧れてた方だもの、やっぱり触れ合いたかった。
「難攻不落」なライザール様を篭絡するにはやっぱり「傾国」のタトゥーしかなかった。
新月の晩ならばその効果を抑えることができたし、ほん少しのきっかけが欲しかっただけ。彼の瞳に欲望が灯るのを確かめた私はライザール様を誘惑した。
それが私達の馴れ初めとなった夜だったけど、店主様のために血を欲した私の求めにライザール様は応じてくださった。
拒まれるかもしれないと不安だったこともあったけど、私の置かれた状況に理解を示してくださったわ。
そんなライザール様をより深く信頼して愛するのに時間はかからなかった。
ライザール様の方も私を愛しく思ってくださるようになっていた。
私達の間の愛が深まれば、その血潮はより貴重な秘薬となると店主様はおっしゃった。
それが嬉しくもあり恥ずかしくもあったけれど、懸念が消えたわけではなかった。
タトゥーから解放されて初めて私は真実の愛を手に入れることができるのだから。
方法もわからないままだったけど交際は順調だったから問題を先送りにしてしまった私が悪かったのだろう・・・
私達は知らなかったの、闇が迫りつつあることに・・まだ気づいていなかったのだ。
エピソード 憧憬と思慕 終