「レイラ」それが我が妻の仮初の名だった。
しかしどこの誰とも知れぬ「彼女」を娶ったことに後悔はない。
あくまでも政略的な意味合いしかなかったはずの婚姻は私に至福の時をもたらすものだった。
愛らしく頭もよい女は好ましいものだ。
もし「本物のレイラ」だったらこうはいかなかったはずだ。
婚姻が正式に整った時、この国の本物の王であるライザには報告をした。
気が進まなくても王として選らばねばならなかったことにライザは理解を示してくれたが、花嫁への愛などもちろんなかったから「後悔はないのか?」と聞かれた時私は言葉に詰まってしまった。
ライザにはシリーンのことを話していたからな。
追憶の少女を忘れられないまま独身を貫いてきた私を彼は友人として心配してくれたのだ。
なんといってもライザ自身、若い頃初恋の女と子を成したロマンチストだったからだろう。
あまりにも未熟すぎて破局してしまったそうだが、生まれた一人息子をライザはいまだに探し続けている。無理もない・・愛する女の忘れ形見ならば猶更だ。
だからこそ私の苦渋の決断に「後悔のないように」と彼は言ったのだろう。
そうだな・・後悔がないわけではなかった。
血筋と家柄だけで決めた相手だ。婚姻まで一度も顔合わせにもいかなかったが、だからといって関心がないわけではない。
一生添い遂げなければならない妻になる女だ。
だから無関心を装いながらも私は密かに彼女に会いに行ったのだ。