「レイラ・・」

 

 

名を呼ばれていることに気づき慌てて振り向くとライザール様がこちらを窺っていた。

 

彼とともにあるために本名を捨ててしまった私だけどまだ「レイラ」に馴染めずにいた。

 

密偵だった頃は緊張の連続だったからまだ割り切れたのに・・

心から慕う方にも嘘をつかねばならないことが苦しかった。

だけど・・本当の私を知られたくなかった。

 

きっと嫌われてしまうもの・・

密偵として数々の男達の閨にはべり惑わしてきた過去は消せない。

 

もちろん身を許したことはなかったけど・・だけどやっぱり愛する方には知られたくなかった。

 

「申し訳ありません・・なんでしょう・・」

 

なんとか心を鎮めて笑顔で応じるとライザール様は気にした様子もなく会話を続けられた。

 

「そなたが妻になってから半年が経つが一度里帰りをしてはどうかと思ってな」

 

・・・え?

 

今なんとおっしゃったの?