そういえば・・以前ライザール様はアリ様の夫人について見知っていたような発言をされていたのではなかった?
・・まさか手を出したりしてないわよね?
ないとは言い切れないのが我ながら悲しい。
ライザール様は愛妾をもたれないし妻も私だけだけど婚姻前のことはわからないし、精力的で魅力的な方だからご婦人たちと火遊びしてる可能性がないわけじゃない。
もちろんこれまで彼の女だった人と会ったこともなければ匂わせてくる女と遭遇したこともなかったけど・・
入念に身辺整理をされたのかもしれないわ。
疑えばきりがないけど・・あえてそうしないのはライザール様を信じたかったからだ。
夜間の外出はぐっと減ったし傍にいてくださるようになったことは嬉しかった。
けっして冷たい方ではないし思いやりもある方だった。
だからより一層、彼を騙していることが辛くもあったの。
だけど本当のことなど言えるはずない・・
大貴族の娘、レイラでない私に価値なんてないもの・・
身分詐称はそれほど重い罪だ。
そう思えばひたすら申し訳なくてならなかったの・・
気まずさを噛みしめながらライザール様の手を取り馬車から降りるとそこには家令とアリ様ご夫婦と思しき方々が出迎えてくださっていた。
慇懃無礼にライザール様に拝礼するアリ様に対しあくまでも鷹揚に応じるライザール様の背に隠れたいと思いながらも、ベール越しにレイラ様のご両親に会釈を返した。
きっと本物のレイラ様だったらもっと天真爛漫にふるまわれたでしょうけど・・