むしろ王のフリで大貴族の小娘を嫁に貰おうなどと考えた私に文句など言えるはずないな。
とはいえだ。現れた身代わりの女は稀に見る上玉だった。
白銀の髪に縁どられた小さな顔、紅をさした蜂蜜色の瞳には知性の光が宿っていた。
妖艶な物腰ながらしとやかさも併せ持った極上の女を前に私だって気分が高揚したさ。
これがアリ家の用意した刺客なら奴らも思いきったことをしたものだと感心しただろうが、みすみすやられるわけにはいかない。
用心を忘れたわけではなかったが、偽りの名を名乗り微笑んだ彼女を一目見た時、甘酸っぱい郷愁にかられてしまったんだ。
シリーン・・いつだって私の心を占めるのはお前だけだった。
片時も忘れたことはない少女の面影を見出した気がした
髪の色や瞳の色はそっくりだった・・・だが表情があまりにも違う。
妖艶な色香を漂わせた「レイラ」を追憶の少女と重ね合わせることはできそうになかった。
この女の目的がなににせよ、アリ家の回し者である以上利用しない手はない。
暗殺者でないのなら・・だがな。
これまで幾度なくこの手で始末してきた女達と同じ末路を辿らぬように願うことしかできなかった。
