「もう一人の私はいかがでした?やっぱりライザール様もああいう方がお好きなの?」
ふと気になって思わず尋ねてみる。すると途端にライザール様は渋面で咳払いなさったけど・・満更でもなかったみたいね。
「まあ否定はしないが、私はお前でよかった。奔放なお前も魅力的だが妻にしたかはわからない。私が欲したのは人生を共に歩める良き伴侶だからな」
「・・・はい
」
なりすましたのが「花嫁」だったからこそライザール様は最初から私を花嫁として扱ってくださった。
もし踊り子として出会っていれば欲望はかわしてもライザール様の愛は得られなかったかもしれない。
そう思えば運命の出会いだったのだと実感してしまう。
踊り子と密偵を経てライザール様の妻になったけれど、立場が変われば己も変えなくてはならなかった。
妻として、王妃としてより相応しくライザール様に寄り添える女性にならなければって決めたことに後悔はないけれどだからといって持って生まれた性が消えてなくなるわけじゃない。
だけどそれは私だけじゃないはず。理想の自分に近づけるための努力はこれからも続けるし、無理だってするだろうけど・・
でもそれはあくまでも表面的なこと。
やっぱり愛するライザール様の傍にいたいから私は頑張れるのよ。
私の愛も欲望もすべてライザール様に捧げた。
それはこれからもけっして変わらないわ・・
貴女にもそうあって欲しい・・
私はもう一人の自分に語り掛けた
同じく目を閉じて物思いにふけっていたライザール様は気を取り直したかのように言われた。
「シリーン案ずるな。たとえなにがあろうとも私は愛と欲望を見誤ったりはしない。それはお前にもわかるだろう?」
ええ・・・わかるわ![]()
笑顔で頷いた後、月光に照らされた庭園で私達はキスをかわした。
