私の正体を確かめたかったライザール様もさぞ戸惑われたことでしょうね。
まだ行為になれてなくてぎこちない私を貴方は気遣ってくれたでしょう?
まるで胎内みたいな場所だった。あの場所で二度目に貴方に抱かれた時、貴方を信じようと決めたのよ。
「さあ聞かせて、ライザール様。本物だというなら証明してみせて」
するとやはり先ほど同様私を腕に込めたままのライザール様が先に応えた。
「まだ私を受け入れる準備ができていないと思ったから遠慮していた。だがあの日お前に誘惑されて我慢できなくなってしまった。
けっして抱きたくなかったわけではない。久しぶりに触れたお前の身体は十分に私を満足させてくれるものだった。初々しさはあったが、艶やかに花開いた私だけの女を欲しいと思った。この答えでいいか?」
本能の赴くまま欲望に従ったというわけね。私は一つ頷くともう一人のライザール様を見つめた。
「私も同じだ。初夜は合意だったとはいえ、やはりお前は後悔したのかもしれないと思っていた。レイラではないと確信しながらも確かめるのを躊躇してしまったのは正体を暴けばお前は私の元から去るだろうと予感があったからだ。私の胸にはいつもあの頃のお前がいた。だが気づいたら私はあの少女の面影をお前に重ねるようになっていた。
愛せるのか・・と自問自答しながら答えの出ぬままお前に惹かれている自分に気づき戸惑っていた矢先だった。
私を誘惑するお前の真意を問うこともできないまま私はお前の魅惑に抗えずに抱いてしまった。これは私を篭絡するための罠なのかもしれないとさえ思ったが後悔はない。だが私達は恐らく同じ葛藤を抱えていたのだろう。誰かを愛することがこれほど不安で勇気がいることだったとはな・・そうではないか?シリーン」
ええ・・そうね。私もそうだった。
私達の間に愛はあるのか、貴方の心を求めてもいいのか、自分の心を捧げる覚悟はあるのか・・
答えはでないままだったけど、すぐそこにある温もりを手離したくないと思ってしまった。
だから少しだけ素直に振舞ったんだわ。