初めこそ妖艶に微笑む謎めいた彼女を心から信じることなどできなかったが、その蜂蜜色の眼差しが私を見るたびに痛いほど胸がざわめいてしまった。

 

恐らく後悔や罪悪感に起因する名残が私を苦しめたものだった。

 

しかし本当の彼女はとても公平で善良な女だったし、私の力を必要としていた。

 

女の色香に惑うほど愚かではないはずだが、私はシリーンを放ってはおけなかったのだ。せめてもの罪滅ぼしに力になってやりたかった。

 

愛なのか欲望なのか判然としない中、私は幾度なく揺らめきそうになったが幾度なく踏みとどまった。

 

彼女が私だけの女ではなかったからだ。

シリーンには他にも男の影があった。後になりその男の正体が判明した時は驚いたが、それもまた私が過去を蔑ろにした結果が招いたものだった。

 

我が友であり理解者でもあるライザの唯一残された息子だったとは・・

 

独身の私にはとうていわからなかったが、親子の絆が彼らを引き合わせたのかもしれない。

 

私達が出会うべくして出会ったのか、再会は過ちだったのかと考えたこともあったが、私は運命の悪戯を受け入れることにした。

 

私はシリーンの過去のほんの一瞬しか知らなかったが、奴は長いこと彼女の傍にいてずっと影で彼女を支えていたようだ。

 

男として嫉妬を感じるには少々若すぎたが、奴もまたシリーンを愛する男の一人だった。

 

そしてどんな形の愛であれシリーンもまた奴を大切に想っているようだった。

 

そうと知りながら結局彼女を諦めることなどできなかった私は、

彼女を誘惑した。

蛇香のライラ ライザール×シリーン 愛の虜囚