「シリーン・・大丈夫か?」
気づいたらライザール様がこちらを伺っていた。
この方は多くを語らないけれどその琥珀色の瞳はいつも私をまっすぐに見てくれた。
「あの・・ライザール様は誰かを愛したことある?」
唐突かもしれないけれどふいに口をついてでてしまった。
するとライザール様は瞠目されたけれど茶かすこともなくどう応えるべきか思案されたあと頷かれた。
「ああ・・それはもちろん。愛ほどままならないこともない。愛してもけっして手に入るわけではないし失ったかと思えば思いがけない出会いもある」
そうだったのね。
ではみんなこの痛みに耐えて生きているのかもしれない。
「そうだったのですね。・・私もそうでした。もう思い出すこともできないのに・・愛を得て失ったことは覚えているんです。」
私を「白娘子」と呼んでくださったあの方を愛していた。
それは確かなことだった。
だけどその愛は成就することもなく鱗とともに私の中から去って行った。
今は甘い痛みが私の胸をうずかせるだけだった。
「ならば私と同じだな。・・だが愛を得れることなど滅多にないことだ。少しお前が羨ましいぞ」
全てを手にした王が私を羨むなんて・・でもそれほど愛は見出すことも得ることも難しいものなのだろう。